レイアウト上に道路を作るとき,幅を決めなければなりません.実際の道路をそのまま写像するのであれば,さすがに現地で測量ことは出来ませんから,Google マップ等を使って簡易的に計測すればよいでしょう.しかしほとんどの場合,レイアウト上の制約で,それっぽく道路を引くことになります.どうせ「それっぽく」作るのですから適当に作ればよい気もしますが,どうせなら実際の法令を参考に寸法を決めてもよいかなと思います.そこでお勉強してみました.勉強対象となる法令は道路構造令です.
まずは道路の種類です.以下に示した道路構造令第 3条第 1項から,立川駅周辺に作る道路は第 3種か第 4種と理解して間違いないでしょう.どうやら,第 4種が都市計画道路,それ以外が第3種であるようです.上の画像は,東京都都市整備局が提供している都市計画情報等インターネット提供サービスによる立川駅周辺の都市計画図です.茶色で囲われた道路が都市計画道路です.すなわちこれらが第4種道路,それ以外が (このエリアには第1種・第2種の道路はないはずなので) 第3種道路ということになります.
駅周辺部にあるのはすべて市道のはずですから,第 3種の場合は第 2級〜第 5級,第4種の場合は第 1級〜第 4級に分類されます.
第 3種についてまず考えます.5級の 1日あたり 500台未満の通行量ということは,2:00〜5:00 の 4時間は極端に通行量が減ってほぼゼロと考え,20時間で割ると 1時間あたり 25台.2分に 1台も通らない状態ですね.私道と区別が付かないような路地が該当しそうです.
その上の 4級の 1,500台未満はその 3倍ですから 1分間に 1.25 台以上確実に通る状態.路地から出た道あたりでしょうか.
さらにその上の 3級だと 4,000台未満ですから 1分間に 3台以上確実に通る状態.これなら,幹線と幹線とを結ぶような道はこのあたりでしょうか.
次の 2級は 4,000台以上.このくらいになると,2:00〜5:00 もそれなりには交通量がありそうですね.24時間平均だと 1分あたり約 3台.バス通りのような幹線であれば第 3種第 2級になりそうです.でもバス通りや幹線の場合,そもそも都市計画道路として指定されていて,第 4種だと考えられます.従って,街路と呼ばれるこうした道路の場合,ほとんどが第 3種第 3級〜第 5級,ごく一部が第 3種第 2級ではないかと思います.
次に第 4種について考えます.
4級の 1日あたり 500台未満の通行量の道路は,第 3種で見たように路地くらいしか該当せず,都市計画図から読み取る範囲ではそんな道は存在しませんから,考えなくてよいでしょう.
その上の 3級の 4,000台未満はその 3倍ですから 1分間に 3台以上確実に通る状態.これも,都市計画道路には該当しないと思います.
さらにその上の 2級の 10,000台未満ならば 1分間に 7台程度通る状態.10秒に 1台ですから,都市計画道路としてはまだ少ない感じがします.都市計画道路に指定されている道路としてはこれが最低限ではないでしょうか.
よって,都市計画道路はほとんどがその上の第 1級になりそうです.従って,都市計画道路は,ほとんどが第 4種第 1級,一部が第 4種第 2級ではないかと思います.
表1. 道路構造令第3条第1項による道路の種類 (*1)
| 地方部 |
都市部 |
道路の存する地域
高速自動車国道及び 自動車専用道路又はその他の道路の別
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高速自動車国道及び自動車専用道路 |
第1種 |
第2種 |
その他の道路の別 |
第3種 |
第4種 |
表2. 道路構造令第3条第2項等による道路の種類
(第1種) |
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計画交通量 (単位1日につき台) |
30,000以上 |
20,00以上 30,000未満 |
10,00以上 20,000未満 |
10,00未満 |
道路の種類 |
道路の存する 地域の地形 |
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高速自動車国道 |
平地部 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
高速自動車国道以外の道路 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
(第2種) |
|
大都市の都心部以外の地区 |
大都市の都心部 |
高速自動車国道 |
第1級 |
高速自動車国道以外の道路 |
第1級 |
第2級 |
(第3種) |
|
20,000以上 |
4,00以上 20,000未満 |
1,500以上 4,000未満 |
500以上 1,500未満 |
500未満 |
一般国道 |
平地部 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
都道府県道 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
市町村道 |
平地部 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
山地部 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
(第4種) |
|
10,000以上 |
4,000以上 10,000未満 |
500以上 4,000未満 |
500未満 |
一般国道 |
第1級 |
第2級 |
都道府県道 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
市町村道 |
第1級 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
次に,幅員をどうすればよいのか調べます.まずは道路の構造から.道路の断面図を書くとこういうパーツで構成されているようです.
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←
路肩
→
|
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←
中央帯
→
|
|
←
路肩
→
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歩道 |
植樹帯 |
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|
|
|
分離帯 |
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|
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|
植樹帯 |
歩道 |
|
側帯 |
車道 |
側帯 |
側帯 |
車道 |
側帯 |
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メインとなる車道の幅員は,特例値を除き,以下のとおりとなっているようです.第3条第6項により,道路は普通道路と小型道路とに分れるそうです.バスが通るような道は普通道路です.よって,立川駅近辺でバスが通るような道の車道は第 4 種とすると,幅員は 3.00 あるいは 3.25m ということになります.
それ以外の街路は,上記で見たとおり第 3 種第 3〜5 級で小型道路でしょうから,幅員は 2.75m ではないかと思います (第 3 種第 5 級の場合は幅員の定めなし).
表3. 道路構造令第5条第4項による車線,第6条による中央帯・側帯の幅員
区分 |
車線の幅員 |
中央帯の幅員 |
側帯の幅員 |
路肩の幅員 |
第3種 |
第2級 |
普通道路 |
3.25m |
1.75m (やむを得ない場合 1.0m) |
0.25m |
0.75m (やむを得ない場合 0.5m) |
小型道路 |
2.75m |
0.5m |
第3級 |
普通道路 |
3.0m |
0.75m (やむを得ない場合 0.5m) |
小型道路 |
2.75m |
0.5m |
第4級 |
普通道路 |
2.75m |
0.75m (やむを得ない場合 0.5m) |
小型道路 |
0.5m |
第5級 |
− |
− |
− |
0.5m |
第4種 |
第1級 |
普通道路 |
3.25m |
1.0m |
0.25m |
0.5m |
小型道路 |
2.75m |
第2・3級 |
普通道路 |
3.00m |
小型道路 |
2.75m |
次に,第6条の第1項〜第4項によると,第 3 種第 3〜5 級,第 4 種第 1〜2 級の道路は中央帯を設けなくともよいようですが,設けるとすれば中央帯の幅員は第 3 種では 1.75m (ただし,やむを得ない場合は 1.0m),第 4 種では 1.0m だそうです.
第6条第5項・第6項により,中央帯を設ける場合の側帯の幅員はいずれの場合も 0.25m だそうです.よって,分離帯の幅員は第 3 種だと 1.25m (あるいは 0.5m),第 4 種だと 0.5m です.
路肩は第8条第1項・第2項で定められており,幅員は 0.5m です.路肩の側帯は第8条第8項により,第 1 種・第 2 種の場合のみに必要なので,今回は考慮しなくてよいです.
歩道は,第11条の3項により 2.0m 以上,歩行者の交通量が多い道路の場合は 3.0m 以上の幅員とされています.
最後に,第11条の4により,第4種第2級の道路には,原則として植樹帯を設けるものとされており,幅員は 1.5m を標準とするとあります.
なお,副道や自転車道,自転車歩行者道といった定義もありますがここでは割愛して,考えないこととします.
立川駅周辺の街路である第 3 種第 2 級もしくは第 3 種第 3 級の道路 (いずれの場合も小型道路),都市計画道路の第 4 種第 1 級もしくは第 4 種第 2 級の道路 (こちらはいずれも普通道路) の場合,これらの結果をまとめると以下のとおりとなります.レイアウトに道路を作る場合,第 3 種第 2・3 級であれば植樹帯なしだと 8.16cm 幅,植樹帯ありだと 10.16cm 幅と考えればよいようです.
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←
中央帯
→
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歩道 |
植樹帯 |
|
分離帯 |
|
植樹帯 |
歩道 |
路肩 |
車道 |
側帯 |
側帯 |
車道 |
路肩 |
幅員 |
(単位=上段:m,下段は N ゲージスケール換算:cm) |
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合計 |
第 3 種第 3 級・小型道路 第 3 種第 4 級・小型道路 |
2.0 |
1.5 |
0.5 |
2.75 |
0.25 |
1.25 |
0.25 |
2.75 |
0.5 |
1.5 |
2.0 |
15.25 |
1.33 |
1.00 |
0.33 |
1.83 |
0.16 |
0.83 |
0.16 |
1.83 |
0.33 |
1.00 |
1.33 |
10.16 |
第 4 種第 1 級・普通道路 |
2.0 |
1.5 |
0.5 |
3.25 |
0.25 |
0.5 |
0.25 |
3.25 |
0.5 |
1.5 |
2.0 |
15.50 |
1.33 |
1.00 |
0.33 |
2.16 |
0.16 |
0.33 |
0.16 |
2.16 |
0.33 |
1.00 |
1.33 |
10.33 |
第 4 種第 2 級・普通道路 |
2.0 |
1.5 |
0.5 |
3.0 |
0.25 |
0.5 |
0.25 |
3.0 |
0.5 |
1.5 |
2.0 |
15.00 |
1.33 |
1.00 |
0.33 |
2.00 |
0.16 |
0.33 |
0.16 |
2.00 |
0.33 |
1.00 |
1.33 |
10.00 |
街路の場合,実際には中央帯・植樹帯は省略されている気がします.この場合,以下のとおりで,レイアウトでは第 4 種第 2 級であれば 7.33cm 幅ですね.
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歩道 |
|
歩道 |
|
路肩 |
車道 |
車道 |
路肩 |
幅員 |
(単位=上段:m,下段は N ゲージスケール換算:cm) |
|
合計 |
第 3 種第 3 級・小型道路 第 3 種第 4 級・小型道路 |
2.0 |
0.5 |
2.75 |
2.75 |
0.5 |
2.0 |
10.50 |
1.33 |
0.33 |
1.83 |
1.83 |
0.33 |
1.33 |
7.00 |
第 4 種第 1 級・普通道路 |
2.0 |
0.5 |
3.25 |
3.25 |
0.5 |
2.0 |
11.50 |
1.33 |
0.33 |
2.16 |
2.16 |
0.33 |
1.33 |
7.66 |
第 4 種第 2 級・普通道路 |
2.0 |
0.5 |
3.0 |
3.0 |
0.5 |
2.0 |
11.00 |
1.33; |
0.33 |
2.0 |
2.0 |
0.33 |
1.33 |
7.33 |
これは実は,レイアウトで道路を初めて作ったときに気付いていたことでしたが,漠然と抱いていたイメージと大きく違うのは,道路全体に占める車線の幅です.これまでは道路幅の 8割くらいを車線が占めるとなんとなく考えていました.しかし実際はこのように,中央帯・植樹帯を設けない場合は全体のちょうど半分だけが車道です.
植樹帯・中央帯も設けるとしたら,道路幅の 15m に対し,(2車線の場合) 車道部分はわずか 40% の 6m しかないんですね.まぁ,こうして法令どおりに整備されている道路ばかりでは必ずしもありませんので,ほぼ車道だけ,という道路も多いとは思いますが.